
『グラスホッパー』は、緻密な心理描写と個性豊かな殺し屋たちの交錯が魅力のサスペンス。復讐や正義に揺れる人間ドラマが好きな方、スリルと哀しさが同居する物語を楽しみたい人におすすめです。
あらすじ
元教師の鈴木は、ある事件で最愛の恋人を失い、復讐のため裏社会に足を踏み入れる。ターゲットを追って潜入した先には、ナイフ使いの殺し屋・蝉、相手を自殺に追い込む男・鯨といった異色の殺し屋たちがいた。彼らの思惑が交錯し、裏社会の暗闘が激しくなる中で、鈴木は自分の正義と向き合い、次第に巻き込まれていく。単なる復讐劇ではなく、それぞれの過去や葛藤、運命が絡み合いながら、意外な展開を迎えていく物語。笑いや切なさも交えながらテンポよく進み、読みやすいのに奥深い——そんな伊坂幸太郎らしい魅力が詰まった一冊です。
心に響くポイント
正義や復讐の“正しさ”は、人によって違う
登場人物たちは皆、自分なりの「正義」や「理由」を持って行動しています。一方的な復讐や殺しも、背景を知ると見え方が変わる。物事には一つの見方だけではないという気づきがあります。
“普通の人”が裏社会に巻き込まれる怖さとリアルさ
主人公・鈴木は一般人だったはずなのに、気づけば殺し屋と同じ世界に。その変化がとても自然で、現実の延長にある怖さを感じさせます。「自分もこうなるかも」というリアルな視点に気づかされます。
ユーモアや軽さが、重いテーマを深くする
殺し屋や死といった重いテーマを扱いながらも、伊坂作品らしいユーモアや会話のテンポが絶妙です。笑ってしまう部分があるからこそ、人生や命の重さが際立つという構造に気づくはずです。
この記事が参考になりましたら幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
