一歩ずつ、すれ違いが絆になる。「夜のピクニック」恩田 陸 要約・読書レビュー

「夜のピクニック」は、過去のわだかまりを抱えたまま前に進みたい人、誰かと本音で向き合う勇気を持ちたい人におすすめです。静かな夜の歩みの中で、友情や家族の絆がゆっくりとほどけていく温かい青春物語です。

あらすじ

高校最後の行事「歩行祭」。一晩かけて80キロを歩くという伝統行事に、主人公・甲田貴子は少し特別な思いを抱いて参加します。実は、同じクラスにいる西脇融(とおる)は、誰にも言えない“異母兄弟”。小さい頃から顔見知りだけれど、複雑な家庭の事情もあって、これまで一度もきちんと話したことがありません。

夜の道を仲間と歩きながら、冗談を言い合ったり、疲れた足を引きずったり――長い行進の中で、貴子の胸の奥に少しずつ変化が生まれます。偶然の会話や、星空の下での小さなすれ違いが、二人の距離を少しずつ近づけていきます。

友情、青春、そして家族。誰の心にもある「言えなかった想い」を、静かな夜とともに優しく描いた物語。歩くというシンプルな行為が、過去と向き合い、前に進むきっかけになる――そんな温かくて胸がじんわりする一冊です。

心に残ったこと

「歩く」という時間が、人の心をほどく

一晩かけて歩くという行為は、ただのイベントではなく、登場人物たちの心を静かに開いていきます。会話や沈黙、足音のリズムの中に、それぞれの想いがにじむのを感じてみてください。

言葉にできない関係の“やさしい距離”

貴子と融のように、複雑な関係にある人同士でも、急にすべてを分かり合えるわけではありません。でも、完全な理解ではなく「歩み寄る」こと自体が大切だと気づかされます。

普通の時間の中にある“青春の奇跡”

特別な事件が起きるわけではないのに、読み終えたあとに心が温かくなる。その理由は、日常の中にこそ成長や和解のきっかけがあるから。小さな一歩が人生を変える――そんな実感を与えてくれます。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。